つくねの箱の中

思ったことをつらつらと。

2021年春アニメ 所感

夏アニメがまだ全て始まったわけではないのでセーフということで...

ざっと並べたものがこちら。

【S】 なし

【A+】メガロボクス ダイナゼノン

【A】 ゾンサガ ゴジラSP 美少年探偵団 シャドーハウス

【Aー】バックアロウ バクテン VIVY エイティシックス

【B+】フルバ モリアーティ カバディ

【B】    ひげひろ

【Bー】大罪

【通期】ボルト  ダイ大

【継続】ヒロアカ(Aー)不滅(Aー)東卍(B+)

連続3クール目に入ったダイ大を通期枠に。

惜しい作品が多かったような気がします。

その中でダイナゼノンは頭1つ抜け出ており、メガロボクスは思わぬ収穫でした。

以下個別感想。

 

【A+】

・ダイナゼノン

空気感一等賞。グリッドマンよりも各キャラクターに焦点を当てた話作りがドンピシャに刺さりました。ロボ物でありながら、その実よもゆめのボーイミーツガールを中心とした成長ストーリーを描く。ボイスドラマの脚本を前作から担当していたことから雨宮監督はこちらの路線に進みたかったのではないかと思っていたけれど、それは正解だったんじゃないでしょうか。大人になりきれていない存在、アンチ主人公チームとして描かれた怪獣優生思想や、ゆめの姉、ひなの死の真相と物語で出てきた要素は成長のためのギミック、という扱い方は一番描きたい物を伝えてくれるという点で好みでした。

惜しむべくは戦闘が雑になってしまっていたことくらいかな。ロボ物を被った、ではあるもののやはりこの作品はロボ物ではあるので、戦闘をノルマ的に扱っていたのはいただけない点でした。そこさえ良ければ間違いなくS、それくらいには好きな作品でした。

 

メガロボクス

王道の1期から大きく姿を変えた2期。軸になっていたのは「帰るべき場所」で、1章2章共に丁寧に描いた巧みなストーリーには驚きはしたもののどんどんとのめりこんでいきました。注目すべきはやはり最終話でしょう。ジョーとマックのどちらか、あるいはどちらもの死が予感された試合でジョーはサチオにタオルを投げられ棄権を選択するという流れ。この展開は王道エンタメ路線とは程遠い結末ではあるものの、それまでに二人の「帰るべき場所」を描いていたからこそ生まれるものであり、また原案「あしたのジョー」のラスト、真っ白に燃え尽きるジョーとから前進したという意味でこれ以上ないものだったと思います。

正直、2期発表の際には蛇足だと感じていたのでここまでのストーリーを描ききったことにはとても驚きました。サチオが幼稚に思えるパートがノイズでSにはしなかったものの、間違いなく良作と言えるでしょう。

 

【A】

・ゾンサガ2期

最大級に勢いがあった1期からはやはり落ち着いてしまったものの、その分終盤に向けての溜めをしっかりと充填していった印象が大きかった本作。その溜めが解放された11話はシリーズ屈指の出来で、これがなければもう1つ下のランクにしていたと思います。また2期というのはキャラ紹介が済んでいる状態からどのように話を深掘りするか、が基本でありそれに忠実だったと感じられたのが5話のリリィ回でした。

このように良いと思える回はあったにせよ、やはりインパクトが薄くなったことは確かであり、1期でいう落雷ライブ回に相当するものが中盤でも来なかったのは物足りなさを感じてしまいました。最終話のライブも言ってしまえば成功が約束されたものであり、どう着地するかが肝だったと思うのですが、宇宙船はさすがにやりすぎかなと。

コンテンツの地力は感じられたものの、惜しさがぬぐえない2期でした。

 

ゴジラSP

ダイナゼノンと同じく、特撮の皮を被ったSFものとして物語を展開してきた意欲作。

具体的にこの話数がよかったというのはなかったものの、強いヒキを持ってきて次週に繋ぎ、その週でクリアしていくという週刊漫画の手法とギミックとして用いられたゴジラの存在感が上手くマッチしており、不穏さを保ち続けたまま見続けることができました。この連続した不穏さが気に入りAという評価をつけたのですが、これができるのは誰も続きを知らないオリジナルアニメだからこそであり、与えられたポジションもしっかり活かせていたなと思います。またSFの「よく分からないけど凄いことが起きている」感や怪獣戦を映像で魅せられておりオレンジの技術が光る作品でもありました。

総じてレベルの高い工芸品、といった作品でしたね。

 

・美少年探偵団

西尾作品が好きでシャフトが好きな自分には死角がない状態で始まったこの作品をAに置けたのは、間違いなくその2つの相乗効果によるものだったと言っていいでしょう。

今作でも多用された西尾作品特有の言葉遊び。これを使うにしてもただ会話させるだけではドラマCDと変わりません。そこで多様な演出が求められるのが難しい点となるのですが、今のシャフトにもまだこれをクリアできる人材が揃っている、それを見せつけるような作品となりました。3DCGを使った演出を用いた大谷肇、キャラの造形を色々と変えてくる岡田健二朗といった風に演出家の挑戦心が垣間見える各話数は見ていて楽しいものばかりで、中身だけ見ると特段山も谷もないストーリーに彩りを加えていたのは間違いありません。また、モノローグ込で長台詞を強制させられる主人公役をシャフト作品おなじみ坂本真綾が上手くこなしており、会話劇としてもしっかりと成立していました。総じてここ近年のシャフトでも特に高品質な出来映えとなっており、ぜひ続きをやってもらいたい作品でした。

 

・シャドーハウス

 黒々とした独自の世界観の中で天真爛漫な主人公が周りを引っ張るという構図がとても好ましい作品でした。とにもかくにもエミリコでしたね。他キャラとの掛け合いを楽しむ序盤、行動力を見せつける中盤、ヒロインとして他キャラを引き立てる終盤とエミリコを中心としたストーリーの回し方が芸術的。また天真爛漫と言ってもバカキャラという訳ではなく、考えて行動した結果で物語が動くのも青年誌特有の思慮深さが感じられました。1クール通して謎を散らしていくスタイルではあったので、ほとんど残した状態で終わってしまったのは原作催促のためとはいえ少し残念ではあったものの、悪役として長い間活躍したエドワードを倒し満足感のいく締めだったと思います。2期あるかどうかは分からないので、原作を買って応援することとしましょう。

 

【Aー】

・バックアロウ

1クール目に盛り上がるための準備ができなかったことがあまりにも惜しい作品。2クール目は全話通して熱い展開を見せようとしていたはいえ、唐突感ある展開が多かったように思えました。1クール目のごちゃついていた単発回や初代ガンダムオマージュであろう村の老人や子供のくだりは2クール目を考えると削ってもよかったですね。勢い重視の作品はそれに至るまでに溜めとなる準備ができていないと作品内だけで盛り上がってしまうという典型例になってしまったかなと。あとは主人公が主人公らしさを発揮したシーンが少なかったことが不満点でした。ゼツの方がよっぽど主人公らしい戦いをしていたぞ?作品名を冠する主人公ならば無双系でいいので物語を引っ張る役割が欲しかったですね。近年の谷口作品では間違いなく良い方に分類出来る分、色々願望が出てきてしまう、そんな作品でした。

 

・バクテン

こちらは上とは真逆のとても丁寧なストーリー。黒柳監督作なら作画による丁寧な日常描写が見所かと思いきや、真の見せ場は3DCGを活用した体操シーンにありました。山下清悟コンテによる試技シーンの数々はその話数のクオリティを担保するには充分すぎる迫力。キャラの反応無しで通しで見せていくというのはアイドルアニメのMVではお馴染みとなっていますが、それをスポーツの演技シーンでやるのは意外性がありとても見応えのあるものになったと思います。こうした強みがあるだけに、キャラクターがとても記号的に見えてしまったのは残念な点でした。アニメアニメした趣味の出し方があったり、ホラー回?が唐突に盛り込まれ他校との関係性をアピールしたりと、キャラの個性の立たせ方が「どこかで見たことあるもの」になってしまっていたと思います。CVが実力者揃いでアニメを見てるなら何回も聞いたことがある声ばかりだったのも拍車をかけていたなと。 総じてはじめてのスポーツアニメ、としてならベストな作品でした。

 

・VIVY

終盤の展開さえ上手くやっていれば文句なしのA以上でした、本当に惜しい。

歌もの、アクションもの、SFものとやりたいことが渋滞していたもののそれら1つ1つの要素が面白さを構成しており結果として1つの作品を産み出すことに成功していたと思います。ただSFの軸としてあったAIによる終末を防ぐというストーリーが未達に終わってしまったことには最後まで納得がいかず。心を持たないAIが心を込めて歌うまでを描くという歌ものとしての軸と上記の軸は共存させることができたと思うからです。長い時間を長い話数をかけて描くことで視聴者に感情移入させるというテレビアニメならではの手法をとってきた以上、そこまでに共有してきた時間を無駄にしてしまうような展開をとってほしくはなかったですね。同じ長月脚本のシグルリとは雲泥の差だったとは思いますが、あと一歩が足りないと感じさせられる作品でした。ちなみにOPは今期一でした。

 

・エイティシックス

1クールで約1巻と贅沢な時間の使い方をしており、それが功罪を生んだ作品でした。

白組の3DCGと澤野BGMによる金属光沢溢れる戦闘や心情描写を丁寧に演出した複数の話数は見てよかったと思うばかりであった一方、全体を通してのストーリーにメリハリがあったわけでなく、1話使うことに疑問を覚える回もあり、毎週1話を見るという行いに適していなかったようには感じました。配信でまとめて見るとまた感想に変化があるかもしれませんね。まだ秋に1クールあるためそちらでストーリーがどのように進行していくのか期待です。

 

【B+】

・フルバ

5クールという長期間で完結までやりきったこと、まずここは評価したいところ。深夜でクール空けながらここまでやれるのはいい時代だなと思います。内容は王道でありながらも昔の作品という感じでしたね。じっくりねっとり進めてきたわりにラスボスパート、5クール目が思いの外急ぎ足だったかなと。また一番長期連載の弊害か途中参戦の生徒会メンバーには最後までいい印象を持てずに終わってしまった。主人公と結ばれなかった側が行き着く先として描くには、これまた少し性急すぎたような気もします。

透と夾が結ばれるのはまあ納得。ここの告白は長い期間かけて描いてきた意味があったと思うようなシーンでした。夾のトラウマ、読者からすれば絶対そんなことないだろとしか思えないのは秘密。ジョジョが大成功している過去作アニメ化シリーズですが、この作品も失敗とは絶対に言えないようなものに終われたと思いました。弾がなくなりつつあるこのご時世、こうした試みは続けていってほしいところです。

 

・モリアーティ

2クール通して淡々と進みすぎてしまいましたね。交差しあうホームズとモリアーティをどのように描くか、というのが肝の作品だったので「最後の事件」編のスピードはもう少し遅めてもよかったかなと。2話でまとめる、という意識が強く出すぎてしまったと感じました。モリアーティとホームズ以外のキャラがそこまで強くなかったことが淡々、と思えてしまった原因でしょうか。1クール目で多く描かれたような悪徳貴族殺害回が2クール目では少なくなってしまい、ボンド、ジャックザリッパーといった新キャラを描くための回がノイズとなってしまったことがパワー不足に繋がったのかと。

 

カバディ

露骨に低予算の壁に阻まれてしまった作品。やはりスポーツ作品は動いてなんぼだったと実感する結果となりました。この作品は原作段階で熱量を充分に備えており、競技シーンさえ動かせば良作となりえただけに残念です。カバディという競技はマイナーなため、動かさないと見ている側がどのように戦っているのかが分かりづらい弱点を抱えていたのですが、それは説明シーンでのCGで補完される程度で収まってしまいました。狭いコートでのスピード感溢れる試合を見たかっただけに、もう少し頑張ってほしかった。話自体は元々読んでいたこともありコメントは特になし。公式戦をやっていませんが、練習試合であってもこちらが引いてくるくらいの熱さを演出しようとしてくるのがこの作品だという好意的な解釈をしているのでここも問題なかったです。

このような作品を見ると、つくづくハイキュー等最強アニメに仕上がった作品が幸運であったことを思い知らされますね。

 

【B】

・ひげひろ

今期唯一のBがついた新規作品。突飛で話題性あるスタートな割に、その後描かれる世界があまりにも牧歌的だったのが残念でした。ヒロインの過去こそ重さを出してきたものの、それを描くまでの仕込みも足りなかった。アニメの範囲外ではあるもの、作品のテーマを壊しにかかるラストのエンドカードがあまりに酷く、視聴後の気分も良くありませんでした。作画も低予算というよりスケジュールが足りなそうな安定のしなさで、全体的にクオリティが低い作品でした。高級感さえ出せていればもう少し評価は変わったのかもしれません。

 

【Bー】

・大罪

夕方アニメの質もどんどんと平均が上がるなか、ここまでクオリティが低いものは久しぶりに見ました。魔神王を倒したあとのエピソードは現在連載中の続編に繋げるためにやったものだろうとはいえ、あまりに蛇足。少年向けといえば聞こえはいいものの、絵も話も10年前の夕方アニメレベルでしたね。日5でやっていた話も絵も質が良かった頃が懐かしい。

 

さて、今回の感想まとめはこれで以上になります。

夏はオリンピック優先で全然視聴できていません!数を絞りつついい作品に出会っていきたいですね。